デスクに戻ると、携帯に着信が残っていた。

竹内君からだった。
きっと資材の件だろうと思って、私はすぐに掛け直す。

「もしもし、竹内君。」

「はい、もしもし。」

電話に出たのは、女性の声だった。
私は間違えたかと思い、慌てて、携帯画面を見直した。

「竹内さんは今、クライアントとミーティング中ですけど。」

残念ながら、間違ってなかった。
多分、昨日の夜の女性だ・・・。

「私は、今、こちらで一緒に仕事をさせてもらってる白井と申します。あなたは、竹内さんの会社の方ですよね。」

きっと、竹内君の携帯に表示られた登録名を見たんだろう。

「はい、そうです。先程、竹内から電話をもらっていたので。」

冷静を装う。

「私が、会社の方にこんな事を言う立場じゃなのは承知していますが、申し訳ないですけど、竹内さんもこちらの仕事で寝る時間も無い程忙しいんです。だから、これ以上、彼に負担をかける様な事は止めてもらえませんか。」

「申し訳ない。」と言いながら、彼女はそんな風には思っていない事が電話越しにも伝わって来る。

社用携帯といえど、竹内君の電話に躊躇なく出る彼女と竹内君との距離は、今の私達よりずっと近いのだと思い知らせる。

それに彼女が言っているのは、最もな事だ。

「お忙しいのにすみません。竹内に負担を掛けるつもりはなかったんですが、そちらの仕事に影響が出てしまったのなら、申し訳ないです。」

私は、『掛け直す』とも言えず、電話を切った。