「もしもし。」

「もしもしじゃねぇよ。」

かなり不機嫌そうだ。

「ごめんなさい、私が勝手に竹内君のデザインを使わせてもらったから、怒ってるよね。ちゃんと、承諾をもらうべきだったね。」

「そんなんじゃねえよ。そんなのはどうでもいい。」

「でも・・・。」

「俺、言ったよな。困ったことがあったらいつでも連絡して来いって。なのに、何で、電話の1本もよこさないんだよ。」

「だって、それは竹内君だって忙しいと思って。」

「どんなに忙しくったて、寝る時間もご飯を食べる時間もあるんだよ。だったら、お前の話を聞く時間なんて、いくらでもあるだろ。」

私は涙を堪えるのに必死だ。

「本当はね、直ぐに話に聞いて欲しかったんだよ。
でも、怖かったの。そしたら竹内君に甘えてしまいそうで。だって、竹内君はここにはいないから。」

「優香、俺はいつだって、優香が望めば駆けつけるよ。頑張ってるお前のためだったら。」

竹内君が、私を『優香』と呼んだ。

「でもね、結局、竹内君はもう十分過ぎるぐらいに私を助けてくれてるよ。あの設計図だってそうだし。沢村君が『竹内さんみたいになりたい。」って言ってた。」

「大袈裟だよ。それに今回の劇場にあのアイディアを合わせたのは優香だろ。天窓の光を活かしたいって。優香らしいって思ったし、きっと、いいものになると思ったから、協力したんだよ。」

私は、空いている片手でテーブルの上に置いてあるメモを手に取った。

『優香も頑張れよ。隼人』って文字。

「竹内君が残してくれたメモは、私に勇気を与えてくれてるよ、毎日。」