クライアント先に到着すると、いつもの会議室に
通された。
いつもの会議室とは、景色さえ違って見える。

私は震える手を必死で押さえながら、担当者が来るのを待った。

5分程して、担当課長が入って来た。
その後ろから初めてお会いする方が見えた。

慌てて立ち上がり、名刺を差し出す。

「初めまして、野崎と申します。本日はよろしくお願い致します。」

その方が差し出した名刺には、統括部長と記されていた。

「君がインテリア担当者か。手が震えてるようだけど、別に君を脅すつもりはないから、安心して下さい。」

そんな言葉で安心など出来るはずもない。

「今日は済まなかったね。急にお呼び立てして。私が明日から出張に出るもので、どうしても今日中に話をしておきたかったんだ。」

「いえ、構いません。ところで、内田様、本日のご用件はどのようなことでしょうか。お電話ではこちらにお伺いしてからと言う事だったので、何も準備できておらず申し訳ないのですが。」

「御社の提案頂いたプランを拝見させてもらったよ。こちらのコンセプトを組み込んだ素晴らしい内容でしたよ。」

「ありがとうございます。」

私の心には全く響かない言葉だ。