朝起きると、優香はまだ眠っていた。

後ろ髪を引かれながらも、俺は出勤の準備をするために、自宅へと戻った。

優香の家を出る前に、優香に『昨日の夜』を忘れて欲しくなくて、メモを残した。

「優香」「隼人」と書いたのは、俺の祈りにも似た思いを込めてのことだった。

なのに、あいつは「何となく。」なんて言う曖昧な返事で終わらせた。

だからと言って俺には時間がなかった。
次の日にはまた、地方に戻らなければならなかったから。

でも、ここで焦っても仕方ない。俺たちには、同期としての10年の歴史があるのだから。

「困ったことがあったら、いつでも連絡しろよ。」
とだけ告げて、俺は出張先である地方に戻った。