私達は、駅ビルの中にある居酒屋の一軒に入った。
平日の中日だからか、そんなに混んでない。

ビールで乾杯し、お互いの近況を報告しあった。久しぶりのアルコールに酔いが回ってくる。

「ねぇ、竹内君、私の名前知ってる?」

「何言ってるの?野崎だろ?何、まさか結婚して名前変わったとか?」

「違うわよ。私の下の名前。」

「そんなの知ってるに決まってるだろ。」

「じゃあ、呼んでみて。」

「どうしたの、急に。優香ちゃん、酔っちゃった?」

「『ちゃん』は要らない。」

「じゃあ、優香。」

私は、自分でお願いしたのに『優香』と呼ばれて、体温が急上昇していく。

竹内君はやっぱりいい奴だ。
理由も聞かず、笑いもせずに、私のお願いに応えてくれる。

「何、紅くなってるだよ。優香が言ったんだろ。」

今度は、竹内君が畳み掛けて来る。
ちょっと意地悪だ。

「違うよ、紅くなってるのはお酒のせいだから。」

「どうしたの急に、変な奴だな。」