サプライズがひと段落すると、皆んながそれぞれで飲み始めた。

優香は輪の真ん中にいて、女性達と盛り上がって
いる。苦労した分、募る話もあるだろう。
その輪の中に沢村がちゃっかり混ざっているのは、気に入らないが、今日は手伝ってもらったし、
許すことにしよう。

ただ、酔った優香は可愛すぎるから、その頃には、連れて帰ろうと思っている。

俺だって優香に会うのは、もう1ヶ月近く振りだから、本当は早く二人になりたいのを我慢している。

俺は隣の藤田さんとしっぽり飲むことにする。

藤田さんが最近の仕事の調子を聞いてくれる。

「今のところ、トラブルもありつつ、概ね順調です。来月末にはいよいよオープンですからね。今日のセレモニーは、僕にも刺激になりました。」

「ここら来たのはセレモニーのためじゃないだろ。野崎さんに会いたかっただけだろう。」

「そりゃそうですけど、やっぱり、セレモニーは
感動しますよ。」

「まぁ野崎さんが手掛けた劇場だからな。」

「藤田さん、今日はやけに絡みますね。」

藤田さんが何度も優香をネタにするなんて、珍しい。

「野崎さんは本当にいい子だから、竹内に弄ばれるのかと思うと、納得できない親心だよ。」

「俺弄んでませんから。優香とは本気で付き合ってます。何なら、俺が振り回されているぐらいですよ。」

「地方に出張に行く度に、期間限定の女を作って
いたお前が、そんな風になるなんてな。」

「そこまで酷いことはしてませんよ。」

「似た様なもんだろ。」

藤田さんに掛かると敵わない。
この人は、調子に乗っていた頃の昔の俺を知り過ぎているから。

「優香には絶対言わないで下さいね。俺、本当に
嫌われたくないんで。」

「言えるか、そんなこと。もし、お前が振られた時には言うかもしれないけなどな。」

「振られませんよ。俺、優香を離すつもりなんかないですから。」

「竹内も変わったな。俺はお前が本当の愛に気付いてくれて嬉しいよ。サプライズなんてする奴じゃなかったもんな。」

「確かに、サプライズなんてしたの、初めてです。」

俺は優香と付き合い始めてから変わったと、自分でも感じている。 

優香といると、打算や計算が安っぽく見えて来る。
もちろん、ビジネスには解き放たれたには必要だ。
でも、避けて通れるなら、その道を探すのも有り
じゃないかと思うようになった。


9時を過ぎた。
そろそろ、俺達二人の時間だろう。
もう俺の我慢も限界だ。
酔った優香は、離れた場所からでも可愛すぎる。