「お疲れ様です。」

オフィスに戻ると、数人の営業事務の女の子達とすれ違った。

お洒落な服を着て楽しそうに会話をしながら、私に気付くと、会釈をしてエレベーターに乗り込んで行く。

ここへ戻って来るまでの電車は混んではいたものの、朝のラッシュとは違う、彼女達のような若い女の子の楽しげな声が響き、仕事終わりの少し緩んだ空気が漂っていた。

私も数年前まではあんな感じだったのかな。
あの頃なら「優香」って名前でも良かったのかな。

閉まったエレベーターのドアを見つめながら、20代前半だった頃の自分を思い出す。

私は、あの課長の言葉に少なからず傷付いていた。だから、いつもよりセンチメンタルになっているのかも。

デスクに戻る前に、「頑張れ、私。」と自分に喝を入れ直す。