「でも、どうするんだ?ほら、お前、元カノ振った時、病気ってことにしただろ。嘘って分かったら乗り込んでくるんじゃねーの?」
「いや、さすがにそこまで」
「いーや、するね。ぜってぇーする。」
「あ!!ゆーちゃんが門の前に居るー!!」
茅ヶ崎がそう言った瞬間、俺と佐々木は窓に駆け寄り、北門を見た。いる。俺の元カノ、由衣が。
いつから居たのだろう。前にあった時より少し長くなった茶色の髪の毛が夕日でオレンジ色になっている。あ、インナーカラーがピンクになってる。そう思い由衣を見ていると、目が合った。
「冬馬ー!」
完全にこちらを見ながら手を振り、大きい声で俺の名前を呼ぶ。
「つっきー、どんまい」
「別にいいし、どうとでも言い訳できるし、また付き合えたらラッキーなんじゃね?由衣、顔だけはいいし」
「冬馬サイテー。」
「つっきー見損なったぞ!」
誰のせいでこうなってるんだと言いたくなるが、それを言うと茅ヶ崎は落ち込むだろう。なんなら、泣く。絶対泣く。佐々木に関しては笑ってるし。
「どうとでも言え。じゃあな」
2人の小言を軽く交して北門へと向かう。あー、なんて言い訳しよう。また付き合ってもいいけど、毎日こう会いにこられても困るんだよな。束縛が厳しくて別れたかったのは事実だし。ってか、俺、由衣のことそこまで好きじゃないし。
そんなことを思ってると、昼休みに会った如月を見つけた。あいつ、俺の下駄箱に何やってんだよ……。
「おい、何やってんだ」
「え、つ、つき、月岡先輩!?」
「何隠した。それ、さっきのチョコレートだろ。」
「月岡先輩が受け取ってくれないから、靴箱に置いとこうと思って……。もしかしたら、女子からだと思って受け取ってくれるかなーとか、思ったりして……」
男子校なのに女子がどうやってチョコレート渡すんだよ。
はぁ、こいつ馬鹿だ。茅ヶ崎と似てる。全く同じだ。俺が断ったり怒ったりすれば落ち込む。俺の方に罪悪感が来るんだよ。俺何も悪くないのに。
「わかった。罰ゲームでもなんでもいいから、チョコレートは受け取ってやる。だから、俺と一緒に帰ろうぜ」
「え?い、いいんですか!!?」
「ほら、行くぞ」
如月は、俺がそう言った途端すぐ横を着いてくる。
犬みたいだな。弟キャラ、癒しキャラとでも言うのだろうか……こいつには、面倒を見たくなるような、どこか目が離せないような感じがする。
それがまた、あの時のことを連想させたが、俺はまた、それに気づかないふりをする。