2月14日、バレンタインデー。
女子は好きな男子に渡すためにドキドキし、男子も女子から貰えるかもしれないとドキドキする日。
でも、俺はドキドキなんてしない。なぜなら俺が通っているこの学校は男子校だからだ。
でも、例外もある。
そう、今、この目の前の状況だ。
「あの、先輩、これ……」
そう言い、手作りであろうチョコレートを俺に渡してくる。
でも、問題はそこじゃない。
ここは、男子高。女子は一人もいない。バレンタインなんて日はこの学校には存在しない。あるとしても母親からのものとか、他校の彼女とか。
でも、この後輩は、俺に向けてチョコレートを渡してる。 でも、俺はこいつのことなんて知らない。
部活もやってないから、なおさら後輩と関わる機会なんてない。こいつについて分かるのは、ネクタイピンが黄色いから1年だということくらいだ。
「月岡冬馬先輩ですよね。おれ、如月晴翔って言います!おれ、先輩のことが」
「ストップ!!まず、俺はお前のこと知らないし、このチョコも受け取れない。どーせあれだろ?罰ゲームかなんかで渡せって言われたんだろ?男子校はそーいうノリあるもんな。」
そう、絶対罰ゲームだ。男が男にチョコ渡すとか、友チョコだとしても渡すことはない。ましてや、こいつと俺は友達でもないんだし。
「……先輩、おれ」
「あーー、そろそろ行くわ。次体育だし。じゃあな」
そういい、如月の言葉も待たずにグラウンドへ行く。
絶対罰ゲーム。それ以外考えられない。そう言い聞かせて……。