「それは……冗談、だよね?」


 ……成瀬の言葉を鵜呑みにしちゃだめだ、私。平静を装いながら、そう尋ねる。


「冗談でいうと、思う?」

「……っ!?」


 隣から、私の顔をじーっと覗き込んでくる。正直、大分というか、あともう少し近づけば触れてしまいそうなくらい、近い。

 綺麗──……


「……いやいやいや、絶対嘘でしょ」



 そんな訳ない。だって私、あんまり関わりないんだもん。成瀬に、それらしい事をした覚えだってないし。

 もし成瀬が私のことを……その、す、好き、としても、好きになる……動機がない。


「あっ、そうだ。分かった。また私をからかおうとしているんで──」

「──違うよ」

「…………っ!?」


 そ、即答……っ!?

 私は、顔を赤らめながら目を大きく見開く。からかっているんだと、そう思いたかったけど、その思いは成瀬の一言によってあっけなく崩された。


「──じゃ、証明してあげようか?」


 急に耳元に近づきそう囁かれる。またしてもカッと赤くなる私の顔を見て、ニヤッと意地悪な笑みを浮かべた。

 ……かと思えば、真顔になり。


「……え、……っ!?」


 いわゆる顎クイというやつだった。

 成瀬は、私のあごに手を添え、軽く引く。成瀬の方へ、顔を強制的に向けさせられた。


「……え、ちょっ……!?」

「分かった?」

「……は、はぃ……」


 ガタッ、と膝が崩れ落ちる。

 ……こ、ここまで、やる、普通?