ぼくは茜色から空色のグラデーションに染まる夕焼けを見ながら今までの人生を振り返った。
いいことなんてひとつもなかった。
最期の最期まで。
ぼくは不幸でクズな自分を嘲笑うために口元に微笑を浮かべたまま目を伏せた。

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遠野茜(とおのあかね)15歳、中学三年生男子。
特技のひとつも趣味のひとつもないつまらない人間である。そして、笑えない程に不幸な人間であると自負している。
理由は単純である。
家にも学校にも何処にも居場所がないからだ。
家にはその日の気分によってぼくへの対応が変わる親が居り、学校には友達はおろか自分をいじめる奴らしか居ないのである。
そして中学三年生にもなると将来について考えさせられるのである。
目の前にエサがあるから食うという下賎な下等動物のように、ぼくの目の前には"明日"というクソみたいに不味いエサがあるからそれを一心に喰らっているだけの下賎なぼくには将来というのは毒に等しい有害物質なのである。