【月光を呑む。】「著:望月 京」

ぷろろーぐ

雨が降った。
影が揺れた。
目が覚める。

月光が、眩しかった。
まだ外からはぴたぴたと水の滴る音が聞こえるもののさっきまでの雨は止み、咲き誇るような星を月光が照らしていた。
夏の暑さはとっくに冷めた九月下旬の夜だった。
窓を開けると、大きく開け放つ前に隙間に夏の夜の匂いが滑り込んだ。
心の穴は夜風に吹かれて温度が下がる。
頬に手を当てて、風は僕の心を弄ぶ。

月光が眩しい、九月下旬の妙に冷めた夜だった。