爽に出会ったのは、高校1年生の春。

桜の木の下で寝ているのを見つけた。

同じ制服だ。同級生かな。すごい綺麗な顔。

爽を見た時とんでもなく顔が整っていると思った。

そっと寝ているその子に私は気がついたら近寄っていた。

『 わ、綺麗。 』

思わず声に出してしまった。

起きちゃうかな?内心ハラハラしながらその子の寝顔を見つめていた。

「何、誰。何見てんの。」

『わあっ! 』

ぼーっと見ていたらいきなり開いた大きな目とその顔立ちには似合わない低音に驚いた。

『 あ、えーっと。』

「人の寝てる顔みて面白かった?」

『いや、面白くはなかったですけど、綺麗な顔だなーって思って。 』

「は?」

綺麗な顔に似合わず、無愛想な子だな。

それが爽の第一印象だった。

『 あ、気に触ったのならごめんなさい。』

「いや、初めてだわ。綺麗とか言われたの。」

『 え!そうなんですか?』

よく言われてそうなのに。と私がこぼすと、

「昔っから女みてーな顔ってバカにされててさ。」

だから、なんかちょっと嬉しかった。ありがと。

はにかみながらそう言った彼はやっぱり綺麗だった。

『 あ!!入学式! 』

完全に忘れてた。もう遅刻だよね。

初日からやらかしちゃったよ。

「あ、」

もしかして、同い年だったりする…?

とりあえずそんな事より一刻も早く学校に向かわなければ。

「おい、後ろ乗れよ。」

そう言って彼は自転車の後ろを指した。

え?初対面だよ?大丈夫なの??

『 え、いや大丈夫です。』

流石に初対面の人に乗せてもらうのも何だか気が引ける。

「俺も同じ学校の同じ学年。」

言ってる意味わかるよな?

だから早く乗れよ。

てことはこの子と私は同じ学校で同い年。

2人とも入学式に遅れる…。

私たち初日から問題児じゃないか!!

『 じゃあ、お言葉に甘えて。』

そう言って彼の自転車の後ろに乗った。

「飛ばすから捕まってて。」

と手を握られ彼の腰に私の手がまわった。

こんなこと初めてだからなんか緊張しちゃう。

『 あの、名前聞いてもいいですか?』

「爽。夏海 爽。」

なつうみ そう。すっごい夏強調されてるじゃないか。

思わず笑ってしまった。

「なんだよ、人の名前で笑うなよ。」

お前の名前は?

『菜乃華。原 菜乃華。 』

「へー。敬語外していいよ。同い年だし。」

『 分かった。爽君って人見知りしない感じの人?』

「あー、多分。つか爽君って、」

『 あ、ごめん、初対面で名前に君付けはキモイよね。』

じゃあ夏海くん。

そう呼び直すと、

「あー、やっぱり名前でいいよ。俺も菜乃華って呼ぶから。」

異性とあまり関わったことがなかった私には名前で呼ばれることが新鮮で何だかむず痒がった。

『 じゃあ私も爽って呼ぶね。』

おう。と無愛想ながらもちゃんと返事をしてくれる。

初めてあったのになぜか心臓がきゅうっとなって、急に恥ずかしくなった。

「菜乃華さ、心臓バクバク言ってるけど。」

うそ、聞こえてるのか。

『 しょうがないでしょ!初めてなんだから!』

「あ、着いた。もう始まってっかもな。」

どうしよう。初日から先生に目をつけられたらおしまいだ。

「あ、まだ大丈夫そうだぞ。」

私を置いて先をどんどん歩く爽。足長いってずるい。

初めてあったのになんか初めて!って気がしないんだよなあ。