眠る王子にお姫様はキスをする

 夜遅く、すっかり暗くなったため、迎えは寄越さず、ルー兄が送ることになった。

 
 過保護な偏愛兄のことだ。帰らなくてもいいんだよ、と言われるかと思ったが、すんなりと送ってくれたことに驚きを隠せない。

 「じゃあ、おやすみ。」

いつものようにおでこにキスをされれば、御影は複雑そうな顔を向けていた。

 自分の姿でキスされるのは嫌なのだろうな…
そんなふうに考えていれば、いつのまにか近づいてきていた御影に、べりっと剥がされた。

 と、同時に私を腕の中に包み、ぎゅっと抱きしめられる。

 後ろから禍々しいオーラを感じるが、無視。
「自分」に抱きしめられているはずなのに胸がドキドキしてそれどころではない。

 

しかし、すぐに禍々しいものにより引き剥がされ、家に入るよう促される。

 ルー兄…顔が魔王だ。普通に怖い。さっさと退散することにする。


 「バイバイ、また明日ね。御影さん。……ルー兄も。」

普段笑わない私であるが、精一杯の笑顔を作る。
 ルー兄の一瞬曇った顔を見て、ルー兄のこともちゃんと呼び忘れず良かったと思う。


「「おやすみ、瑞季/瑞季さん」」

 重なった声に私は少し笑ってしまう。

 ーほらほら、そこ睨み合わない。
 こんな状態では一緒に暮らすことになる2人の今後が不安で仕方ない。


 まあ、頑張って。
 心の中でそう祈りながら、玄関に足を踏み入れた。