ヤンキーとお姫様


駅の中にあるカフェに入った



「ありがとう
いただきます」



ふたりでホットココアを飲んだ



「脳が疲れてると甘いのが飲みたくなるよね」



言葉が柔らかくて話しやすそうな子



この前よりは緊張してないかな

耳赤くないし



オレはこの前より緊張してるかも…



この間は思いがけないことだったから
緊張とかより驚きが大きかった



「大学もぉ決まってていいね
地元から離れる?」



「うん、離れる
独り暮らし」



「へー…楽しそう
天国だね
友達呼び放題だし
うるさい親もいない
あ、うるさいのはオレの親だけどね」



「長瀬くんは?
地元に残るの?」



「うん、オレは受かれば地元
自宅から通えるところしか考えてない」



「さっき
親がうるさいって言ってたのに?」



「うん…」



「あ、もしかして…
こっちに彼女いるとか?」



「彼女いない
でも、離れたくない人がいる
だから、自宅から出れない」



「そっか…
今のが、答えね」



「いや…ん…うん…ごめん…」



「んーん…
長瀬くんのこと知れてよかった
何も知らなかったから…
あ、名前はね、
長瀬くんと同じ学校の友達に聞いたの
ごめんね、勝手に…
髪が金髪で…って言ったらすぐにわかったよ」



「あー…
うちの学校、オレしかいないからね
そんな時からオレのこと見てたの?」



「うん
知らない人に見られてたと思うと
気持ち悪いよね
ごめんね」



「そんなこと思わないけど…
オレ、なんかした?」



彼女がオレに
好意を持ってくれるきっかけって
何だったんだろう



「うん
私の勘違いかも知れないけど
入学して間もない時
満員電車に慣れなくて
押しつぶされそうになってる私の
壁になってくれなかった?」



「あ…そーだっけ…
でも、オレいつも本読んでただけだから…」



たしかに小柄な女の子が押されてるのを
横目で見ながら本を読んでた



「うん
それで私も同じ本を買って読んだりしてたの
それも気持ち悪いよね
ストーカーか…って…
ごめんなさい」



はにかむ彼女はかわいかった

嫌な気持ちにはならなかった



「えっと…名前…」



「あ、そお!
手紙に名前書くの忘れてね…

それも言いたかったの
小室 花(こむろ はな)です

あ、でも…もぉ…必要ないか…」



「小室さん…
小室さんと話せてよかった
声掛けてくれてありがとう」



「名前、呼んでくれてありがとう

あと、今日、話せてよかった」



「大学受かったら、連絡してもいい?
せっかく電話番号書いてくれてたから…

受からなかったら連絡しないから
落ちたと思って…」



「うん、待ってるね

受かったら、告白するの?」



「んー…その予定は、ないかな…」



「私は、大学受かったら
長瀬くんに気持ち伝えたいな…って
ずっと頑張ってたの

自分のことばっかりで
長瀬くんがまだ頑張ってるのに
ごめんね

あ!今もこんなことしてる場合じゃないね
帰って勉強しなきゃね!」



「そんなことないよ

オレが喋りたかったから誘った

頑張った人からパワーもらえたから
よかった」



小室さんは

受験も告白も頑張った



やり切った顔をしてた



「なんか…
切ないけど、嬉しい…

3年間、好きでした

言えてよかった
聞いてくれてありがとう

受かるといいね!

それから…
実るといいね!」



「うん…」



もぉ会うことはないのかな

受からなかったら話すこともない