ヤンキーとお姫様


トントン…



「ハイ…」



ガチャ…



「一輝!」



姫香の声



「うん…」



「アレ?眠いの?」



オレはベッドに仰向けで大の字になってた

最近のスタイル



力が入らない



テストで燃え尽きたから



じゃなくて

失恋だろ



ダサ…



「ダルい…」



「熱、あるの?」



姫香が視界に入ってきた



「入ってこないで…」



オレの視界に…



「え…」



「入ってくるな!
彼氏いるクセに
他の男の部屋に
入ってくるなって言ってんの!」



「別に
一輝ならいいでしょ!」



「そんなことダレが決めたの?」



「ん?だって、幼なじみだよ!」



「椎那にバレたら椎那怒るだろ」



「そぉかな?
瑞樹(みずき)優しいもん」



え…

ミズキってダレ?



椎那ってミズキって名前だった?



ミズキって呼んでんだ

姫香



「オレが椎那だったら
嫌だけどね…
幼なじみでも…」



「なにが?
一輝は瑞樹じゃないし」



そんな笑顔で…

そんな格好で…



風呂上がりに
シャンプーの匂いさせて

異性の幼なじみの部屋に行くって…



オレなら…



「帰れよ」



「痛い!」



姫香の手首を強く握ってた



「もぉ…来るな…」



「…もぉ、来ないよ…

じゃあ、離してよ!
手、離して!

痛いよ…」



帰れよ

来るな



オレがそぉ言ってるのに

姫香の手をギュッて

握ってた



カラダから出る力

全部そこに込めてた



「ごめん…姫香…」



バタン…