姫香を胸に抱いて
小室さんに電話した
姫香が不安そうだったから
通話をスピーカーにした
「はい…」
初めて見る番号に戸惑ってる出方
「小室さん?」
「は、い…」
「長瀬だけど…」
「あー!長瀬くん!」
「今、大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ!
ひとりでアパートにいたの
…
夕飯なんにしよう…
…
あ、長瀬くん…
大学…
って、ごめんね…
私ひとりで喋っちゃった」
「元気そうだね」
「うん、元気だよ!
入学式まだだから
まだ友達もいなくて…
こっち来てから
いつもアパートでひとりだったから
なんか、誰かと喋りたくて…」
「きっと小室さんなら
すぐ友達できそうだね」
「だといいな…」
「オレ、今日、入学式だった
…
ごめん…
受かったら電話するって言ってたのに…」
「受かったんだね!
よかったー
おめでとう!
ずっと連絡ないから
ダメだったのかな…って…
…
今も気になってたけど
私から聞くの、なんか悪くて聞けなかった
…
でも
なんか、毎日待ってた
長瀬くんから、電話掛かってくるの」
「ごめん…
遅くなって
…
合格したこと
先に大切な人に知らせたかったから…」
「あー…
この間、言ってた
離れたくない人?」
「うん…」
「そっか…
…
気持ちも伝えられた?」
「いや…
それは、まだ…」
「伝わるといいね」
「うん…ありがと…
…
でも、無理かな…」
「弱気だね」
「ん…嫌われてるかも…」
オレが苦笑いしたら
電話の向こうで小室さんが笑った
「じゃあ…
…
今度は…
伝わらなかったら連絡ちょうだい
…
伝わったら
連絡いらない
…
連絡なかったら
私からもしないし
長瀬くん、幸せなんだな…って思うね」
「あー…んー…」
「自信なさそうだね
…
まぁ、私は
連絡あった方が嬉しいかな…
…
ウソウソ…
…
きっともぉ
私たち
話すこと、ないと思う
…
これが最後だね
…
あ、でも…
もし地元帰った時
長瀬くんが彼女といたら話し掛けるね!
…
その時は、紹介してね!
楽しみにしてる」
「うん…
…
小室さんに会えて…
よかった
…
ありがとう」
「うん…
…
長瀬くんに恋できて
よかった
…
ありがとう
…
じゃあ…
バイバイ…
…
元気でね」
「うん…
…
また満員電車で守ってくれる人
いるといいね」
「うん…
…
いるといいな…
…
さよなら…長瀬くん」
「うん…
…
小室さん
元気で、頑張って…」
通話が切れた
ありがとう
キミに会えてなかったら…



