サヨナラ、セカイ。

引き継ぎ。本人から?じゃあ生きてる見込みはある?だとしても言葉どおりに受け止めるなら、ナオさんはもうココニ戻ラナイ。

余程のことがない限り、自分のクリニックを他人任せにする人じゃない。教えてナオさん、一体なにがあったの!わたしはどうすればいい・・・?!

ひたすら混乱したまま診察を終えた。異常は見当たらなかったと丁寧に説明してくれた先生に、申し訳なさが込み上げながらお礼を言った。

「お大事に」

そう言ってくれるのがどうしてナオさんじゃないのかと。返す笑顔が歪みそうになった。




結局ナオさんのことは何も分からなかった。お会計のときにも、受付の若い女性にさり気なく『吉見先生がお休みなんて珍しいですね』と振ってみた。笑顔で言葉を濁されただけだった。

気持ちの整理が全くつかないままお昼休みを終え、午後2時を過ぎた頃だった。着信音をしぼったスマホがキーボードの脇で小さく鳴り出した。