電話がなかった火曜と水曜はちょうど連休だった。木曜休みのクリニックに当然ナオさんの車はなかった。

金曜の朝。駅から会社に向かって歩く足が何度ももつれそうになった。もし。あの車が駐車場に停まってたら。

そこにいるのに、わたしとの連絡を絶っているんだったら。

デザインチックな四角い建物の前を過ぎた。中の灯りが見えて診療は始まっている。隣が駐車場。いつもの定位置に見間違うはずもない車が置かれていたのを。視界に捉えたと同時に駆け出していた。

顔をが歪むのを必死に堪えた。考えない。何も考えない。声にならない声で叫びながら息を切らせた。



会社に着いて、いつも一番乗りの社長に挨拶をして。開店準備をしてるあいだに郁子さん夫婦が来て。ルーティンだから体は勝手に動いていた。頭の中は空洞で、心は麻酔が打たれたように感覚も感情も麻痺してる。

来客の対応や書類の作成をこなし、お昼休憩で一人きりになったとき。ようやく朝に見た光景がぼんやり浮かんだ。

ナオさんはクリニックに来てる。
普段どおりに仕事をしてる。
でも連絡はない。
スマホが通じない。

事実をただ積み上げていく。機械的に。ただそこから導きだされる答えを求めて。