想像してなかったわけじゃなかった。ドラマや漫画でもよくあるシーン。まさか本当に自分の身にも起こるなんて。興信所を使って調べさせたのなら、ナオさんがここに来てることも調査済みなんだろう。

思考回路を懸命に巡らせる。とにかく何を守ればいいのか。ナオさんは、奥さんがわたしに接触する可能性は考えてなかったと思う。

震えそうになる脚を一歩、また一歩踏み出して。破滅へと向かう気分。心臓の音が耳の奥から聞こえる。息苦しい。緊張で全身の神経が張り詰めてく。

ナオさんの顔が瞼の裏を過ぎった。

わたしの気持ちは誰も奪えない。

この人から奪う権利も誰にもない。

もし。縋られたら。

返してと叫ばれたら。

もし。

・・・・・・もしも。