カラリ、と音を立てて私の手からお気に入りのシャープペンシルが机から落下していった。

昼休みが終わってからの、一番眠くて辛い授業の中で響いた小さな音は、誰にも気づかれることなくて、私も一瞬シャープペンシルが落ちたことに気が付かなかった。

クラスメイトの半分以上が夢の世界に入っている中で、先生が淡々と教科書に載っている数式を読み上げて黒板に書いていくだけの、授業。

ただいつもと同じ時間だけが過ぎていった。



「……拾わねーの」



だから私もみんなと同じように、半分夢の世界に入りながらシャープペンシル落ちたのを確認して。それからゆったりと床に手を伸ばそうと思っていた。

そしたら少し低めの、それでいて心地いい声が隣から聞こえたから、ふと閉じかけていた目蓋をゆっくりと持ち上げて、そちらに視線をやった。

実際に行動はしていないけれど、今から拾う予定だったんだよ、と隣の席に座る桜木紬(さくらぎつむぎ)を未だに眠くて重い瞳で睨みつけた。

そんな私に目を向けることなく桜木は、私のシャープペンシルをサッと拾い上げて、私の机の上にポンッと置いた。



「ほら」



別に拾って欲しいって言ってないし、なんなら今から拾おうとしてたところなんだけどって、心の中で呟いて、それから小さな声で「…ありがとう」って呟いた。

もちろん少しムカついたので桜木の方なんて見てない。