考えても 考えても、考えはまとまらなかった。棗がなにを思っているのか分からなくて、不安になって…

棗のあとに続いて寮に戻り、自室に入ってからは、夕食の時間までひたすら色んなことを考えてた。
まとまらないのにずーっと考えてた。

夕食の時間、蛍の隣に座ってもくもくとご飯を食べて、それからまたすぐ自室に戻って
ベッドにうなだれながらまた棗のことを考えてた。


『…ウチ、わからん』

窓からのぞくお月様を眺めながら、ぽそっと呟いた。

『棗は…もうウチのこと、
好きじゃないんやろか』

ぽろぽろと言葉が零れてきたけど、一向に考えはまとまらなくて。

不安と恋しさに、雫がこぼれそうになった。



『棗…。』



雫が一粒、頬を伝ったとき

眺めていたお月様が、黒い影に遮られた。


『…え』

窓をコンコン、と軽く叩く音がする。


…もしかして、
『なつめ?』


がばっと起き上がり、すぐ窓にかけ寄って
急いで窓を開けた。


そこにいたのは、はっぱまみれの棗だった。

『棗…!ここ2階やよ、まさか登って…』

まだ喋り終わらないうちに、棗は窓からこちらに倒れ込んできて、ウチを強く強く抱きしめたんだ。


言葉がでなかった。

言いたいことがありすぎて、
詰まってしまって。

言葉の代わりに、雫がどんどんこぼれおちていった。

「…蜜柑」

『…っ』

「蜜柑。ごめん」

『…っな、』

「蜜柑のこと…とてつもなく好きだ」



棗の言葉に、一瞬思考回路が止まった。

耳や頬が、どんどんと
熱を帯びていくのを感じた。