七瀬くん、恋をしましょう



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次の日、選択科目・製菓の授業でバナナマフィンを作った。

本日のテーマがバナナマフィンを作ることであり、トッピングは人それぞれ自由。

ちなみに私は輪切りにしたバナナをマフィンの上に乗せている。

他の子は自宅からチョコチップやドライフルーツなどを持ってきてる人もいた。


…作ったはいいものの、七瀬くんに何て言って渡そう。

昨日、私が勝手に切れてそのまま帰ったからな…。

気まずいっていうより、申し訳ないという感情の方が強い。


「汐莉、作ったマフィン七瀬くんにあげるの?」

「んえっ…と、あげるつもりだけど、絢ちゃんは?」

「ウチは彼氏にあげるよ。今日の放課後一緒に帰るからそのついでに渡そうと思ってね」


ニカッと嬉しそうに笑う絢ちゃんが眩しくて。

恋する乙女の笑顔は、とんでもないくらい可愛らしい。


絢ちゃんと絢ちゃんの彼氏さんは中2から中3の終わり頃まで付き合っていて、2人は別々の高校に決まり、会える機会も少なくなるため、『別れよう』という決断に至ったそうだ。

けれど、中学を卒業してからというもの、未だお互いのことを忘れられず、高校1年生の夏頃にもう一度再会し、復縁することに。


何というか、少女漫画などでありそうなお話…。