「遠坂さん、なんか、少しかわいくなった?いや、遠坂さんは元々かわいい方か……」
「えっ…ええっ??」
穴があきそうなくらいじーっと見つめられ、今すぐこの場から逃げ出したくなった。
「遠坂さん見てると母性本能が目覚めるというか、なんというか───…あ、ちょっとうちの妹と似てる」
「……」
微笑ましそうな表情を浮かべる七瀬くんとは反対に、今の一言でスンッ…と気分も体温も一気に急降下していき、真顔で彼を見つめ返す。
次第にはワナワナと体が震え出した。
「…くんの…七瀬くんのスカポンタン!!!」
激怒した私は頭上に乗せられていた七瀬くんの手をぺしっと痛くない程度に振り払う。
「どうしたの、急に。…あと、俺はバカでもドジでもマヌケでもないよ」
「うるさい!七瀬くんのバカ!」
「遠坂さん、敬語じゃなくなってるよ」
脈あり診断、若干信じてはいたけど、今の七瀬くんを見て改めてわかった。
『好意はあるけど、まだ自覚ナシ』などの程度ではない。
ただ私が自惚れていただけじゃないか。
少しでも期待していた自分が恥ずかしい。


