「オレ今日そんな気分じゃないんだけど〜」

「キスしてくれたら帰るから……ね、お願い」

「…もーっ」


…なんなんだ、この会話は。

こんな公共の場で接吻をしようとするなんて……。

そう思いながらじーっと2人の様子を眺めていると、不意に中条くんと目が合ってしまう。


「あれ、遠坂さんじゃ〜ん!おーい!」


横にいる女の子をほったらかして私に向かって大きく手を振ってきた。








「な、中条くんごめんね。彼女とのお楽しみを邪魔しちゃって…」


無意識にカップルがキスをする場面をガン見してしまった挙げ句、私がガン見していたせいで可愛らしくキスをおねだりしていた彼女は『萎えた』と一言吐き捨て去っていった。


「あー…あの子彼女じゃないよ。ただの友達〜」

「へー、そうなん───…ええっ!?ととと友…!!??」

「そーだよ〜」


中学の頃からプレイボーイと有名だったけれど、中条くんって彼女でもなんでもない"友達"ともキスするんだ……。


「…でも、今の子明らかに中条くんに好意寄せてるように見えたよ。気持ちに答えてあげないの?」

「答えるも何も、性的な意味で好きじゃないんだから無理でしょ」

「だ、だったら今の子みたいに相手に気を持たせるような行為とか、優しく接して期待させるようなことはだめなんじゃないかな…」