キーンコーンカーンコーン


HR終了のチャイムが鳴り、部活に行く生徒やそのまま帰宅しようとする生徒たちが次々と教室を後にする。


「汐莉!ウチ先帰るね!」


絢ちゃんが慌てた様子で私の横を通り過ぎる。


「今からバイト?」

「そうっ!んじゃ、また明日〜!」

「バイバイ!」


急いで去って行く絢ちゃんを見送り、私も鞄を手に取って教室を出る。

昇降口でローファーに履き替え、校門を通り抜け、駅へと向かう。

いつもは絢ちゃんと一緒に帰っているが、こうして1人で歩いていると考え事をしてしまう。


…そう言えば、今日七瀬くんを見かけたの昼休みだけだ。

クラスも違うから会える確率も低い。

それに、以前までは見かけたり、すれ違う程度の関係だったため、今日みたいに声をかけてくれたということは、だ。

七瀬くんは私のことを少しでも認識してもらえているのではないか。

そう思えてくるとなんだか前向きな気持ちになるな。

『恋とは何なのか…』みたいなことを聞かれて、未だに恋について教えた記憶はないけど、もっと七瀬くんに意識してもらうために頑張ろう!


「ねえ中条、バイバイのキスして〜」


1人心の中で意気込み、駅に到着した時、

入り口前でお互いの唇に口づけをしようとするカップルが目に入った。

よく見たら中条くんと他校の制服を着た女の子が抱き合っている。