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「汐莉、ウチは怒っている」
「うん、ごめん。ほんとごめん」
次の日の朝、教室に着くと不貞腐れた絢ちゃんが突進してきて、現在抱き締めの刑にあっている。
「絢は激怒した」
「言い方が『走れメロス』の冒頭部分だね」
何故、絢ちゃんが怒っているのか。
それは昨日の放課後、七瀬くんと勝手に帰ったからである。
「絢ちゃん、ごめんね。七瀬くん眠たそうだったから先に帰ろう…ってなってね」
「七瀬幼稚園児かよ」
「"あいつ"なんて言っちゃダメだよ」
「…ふんっ、とにかく七瀬くん許さない。いくらイケメンでも絶対許さない」
「絢ちゃん…」
眉をハの字に下げ、よしよしと彼女の頭を撫でていると───…。
「はいはい、そこのお2人さ〜ん!教室の入り口でイチャイチャするのやめてくださ〜い。邪魔で〜す!」
「…わっ!?ごめん中条くん!」
同じクラスの中条くんが私たちに声をかけてきた。
「つーか、アヤご機嫌ななめじゃん。どしたん?」
「ちょっと色々あって…」
苦笑いをしながら絢ちゃんの代わりに答える。


