「もしかして遠坂さん、俺の好みに合わせて髪短くしたの?」
冗談気味に言った彼の言葉に全身が一気に熱を帯びていく。
図星をつかれた挙句、恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になった。
観念した私は今にも消え入りるような声で「仰る通りです…」と答えた。
その後、スカートの裾を両手できゅっと握りしめ、俯いた。
湯気が出るのではないかと思うくらい七瀬くんの言葉を待っていると、
「……そう、なんだ……」
と、詰まったような返事が返ってきた。
七瀬くんの好みの髪型を盗み聞きして、その次の日くらいに髪を切るという、ストーカー疑惑が出そうな行為をしてしまったんだ。
しかも話したこともない相手のために、だ。
ドン引きを通り越して恐怖だろう。
「…ひ、引きましたか?」
恐る恐るそう聞くと七瀬くんは「ううん」と首を横に振る。
「引いたっていうか、驚いた」
反射的に顔を上げるとどう言った感情なのかよくわからない七瀬くんと目が合う。


