七瀬くん、恋をしましょう



「…あ、よく見れば遠坂さんの今の髪型、俺の好みと同じだ」


ドクンッ。

七瀬くんの言葉に心臓が大きく音を立てた。







───七瀬くんを好きになったばかりの頃。



『なあ、七瀬って女子の髪型で好みとかある?』



たまたま(・・・・)、七瀬くんのクラスへ遊びに来ていた時のこと。


『…特に考えたことないかも』

『えーっ、マジかよ。女子に無関心すぎね?』


絢ちゃんたちの会話に相槌を打ちつつ、七瀬くんたちが話している方へ耳を傾ける。


『じゃあさ、ロングかショートどっち派?』

『…ショート、かな』

『へーっ!でもさ、ショートつっても種類あんじゃん?ショートボブ・ミディアムボブ・ロングボブとか!』

『そんな種類あるんだ。よく知ってるね』

『そりゃあ、おれんち美容院ですから?』

『ふーん』

『おいっ!もっと興味持たんかい!!』


七瀬くん、ショート好きなんだ…。


ふーん、と思いながら毛先をくるくる自分の指に巻きつける。


『…で?結局七瀬はどんなショートが好みなん?』

『…強いて言えば、首元くらいの長さが好きかな』


その一言で(盗み聞きをした)私は休日に長かった髪をバッサリと切ったのである。