「ごめん、半分寝てた」
「そ、そうでしたか。眠いなら無理に絢ちゃんに付き合わなくても大丈夫ですよ?」
「…俺帰ったら遠坂さん1人になるじゃん」
「私は彼氏さんが来られたらそのまま1人で帰る予定だったので何の心配もないですよ?」
「そうなんだ」
七瀬くんは顎に手を当て、ふむ…と考え込む。
「ならいっそのこと帰ろうよ」
「えっ……」
返事をする間もなく、ガシッと七瀬くんに腕を掴まれ、引きずられるような状態で歩かされる。
「えっ!?あのっ、七瀬く──…ちょ、ちょっと待ってください!」
「何?」
ぴたりと足を止めた七瀬くんがこちらに振り向いた。
「ひ、1人で帰る予定だったので何の心配もないですって、言いましたよね…?」
「つまりあの人の彼氏が来たら遠坂さんは用済みってことでしょ?」
「言い方っ!!」
「そもそも友達の彼氏が迎えに来るまで一緒に待つとかすっごい時間の無駄じゃん。それなら俺と帰ろうよ」
「っ…」
黒い瞳にじっと見つめられ、心臓がとんでもない速さで高鳴り出す。
こ、この男…!
好きでもない女子に『一緒に帰ろう』だなんてよく言えるな…!


