七瀬くん、恋をしましょう

「でも、沢山の人から告白されるなんてすごいことですよ」

「んー…そうかな。俺は別に凄くもないし、何とも思わないけど」

「私はすごいと思います」

「遠坂さんはそうかもしれないけど、俺は告白された人数が多ければ『凄い』とか、『自慢だ』とか、思いたくないな。だって、気持ちに答えられなくて、傷つけちゃうんだよ。それを"自慢"で括り付けるのはよくない。せっかく勇気を出して想いを伝えてくれた相手に対して失礼だし、何が凄いのかもわかんない……」


…確かに、七瀬くんの言うことにも一理ある。

『自慢ですか？』って聞かれるとそうでもない気がするしな……。


「───…じゃあ、キツい言い方していたのはその相手の人たちのことを考えてわざと……？」

「その方が相手のためになるでしょ」


"七瀬くんは女の子をこっぴどく振る"


そのような噂は本当だったが、人の見た目を似合う・似合わないで決めつけるのはよくない。

だけど、七瀬くんも七瀬くんなりに相手のためにと思ってあんな言い方になっていたのかも。


「…遠坂さん」

「は、はい…」


遠くを見ていた七瀬くんは、視線をこちらに向ける。