終業式の日だった。
夏休みが始まろうとし、皆が浮き足立っている中、私は廊下を走っていた。
帰宅しようとする生徒、
部活へ向かおうとする生徒、
集団になって駄弁っている生徒。
生徒たちで賑わう廊下を掻き分け、視線の先に見える人物を追いかける。
『あ、あのっ…!』
精一杯の声を振り絞って彼を呼ぶ。
そしたらきみは、眠たそうな瞳で
『何?』と言って振り返ったっけ。
『えっと…保健室に連れて行ってくれたの、あなたですよね?』
あの時は意識が朦朧としていたから記憶が曖昧だった。
だけど、友達から聞いて私はどうしてもお礼が言いたくて───。