ー次の日ー
私が七瀬くんを好きだということをご本人様にバレてしまい、現在、絶望的な状態であった。
あんなサラッと、口滑らしてまで言うつもりなんてなかった。
見ているだけで十分幸せだった。
『遠坂さん、俺のこと好きなの?』
驚いた顔でそう聞いてくる七瀬くんに私は苦笑いを浮かべて、
『ははは、あの…私、帰りますね…!』
曖昧な返事をし、その場から逃げた。
走っていた途中、足がもつれて転んでしまった。
とても痛かった。
膝も勿論痛かったけど、
"好き人がいない"
と、嘘をついてしまった罪悪感が強いあまり、膝よりも胸が痛かった。
…七瀬くんに"恋ってどんなものなのか"などとのようなことを言われた気がしたけども。
本当に教える羽目になったのだろうか。
そもそも私、『はい、わかりました』なんて言ってないし。
…そうじゃん。
七瀬くんと約束なんてしてないじゃん。
なんだ、よかった…!
どうせあっちもどうでもよくなってるだろうし、昨日のことはなかったことに───…。
「汐莉〜」
教室の入り口から友人の絢ちゃんの呼ぶ声が聞こえた。