「…まあ、結婚したら遠坂さん『七瀬』になるもんね。せっかくの機会だし、下の名前で呼んでみる?」

「えっ、けっこ…えぇっ??」


さりげなく未来のことを考えてくれていることに驚いたのと、以前七瀬くんが話してくれた夢の話を覚えてくれていたのがすごく嬉しかった。

一人で感動している私を放置して、七瀬くんは何事もない表情でぐっと距離を詰めてくる。

綺麗な顔が近くにあってかっこいい…と、呑気に見惚れてしまう。


「…いい?」

「は、はいっ…」


ドク、ドク…、心臓が大きく音を立て始め、体温も徐々に上がっていく。


「汐莉」


その瞬間、一気に体全身が熱くなって、両手で顔を覆い隠した。


「汐莉ちゃん、照れてんの?」


意地悪な表情で手を掴まれ、真っ赤な顔を見られてしまう。


「みみみ見ないでください!!」

「だめ。『唯人』って呼ばれてない」

「無理です!無理すぎます!!」

「…言わないと胸元にあるほくろ見せてもらうけど、いいの?」

「えぇっ!?」


人差し指でぐっとリボンを引っ掛けられる。