「面白い想像力だね」

「笑い事じゃないです…!!」


何でこんな呑気なんだろう…。


「…今更だけど、名前なんていうの?」

「と、遠坂(とおさか)です」

「遠坂さんって今好きな人いる?」


彼の唐突な質問にギクッとする。


「いいいいないです…!!」

「…ふーん、そっか」


私のばかやろう。何動揺してるんだ。

ポーカーフェイスもできないのか、こんちくしょう。


そもそも、

"好きな人は七瀬くんです"

だなんて、言えるわけがないし……。


「恋ってさ、だるいの?」

「えっ…」

「好きな人ができるとどんな感じなの?」

「あの…」

「好きな人の前だと心臓がうるさいっていうけどそれ本当なの?」


じりじりと詰め寄られながら質問攻めをされる。

そして気が付いた時には背中に冷たい壁の感触がして、追い込まれる状態に。

黒く、澄んだ瞳が私をとらえ、


「"恋"ってどんなものなの?」


至近距離で彼は見下ろすようにそう言った。