「うわぁ~!かわいいっ…!」

 満面の笑みで写真を撮るももを見つめる。目の前にはこけ猫ランチセットが湯気を立てている。ワンプレートにオムライス、サラダ、ハンバーグ、スープが載っている。オムライスにはケチャップでこけ猫の絵が書いてあるし、スープにはこけ猫のなるとが浮かんでいる。ハンバーグはねこの形だ。プレートの右上にはこけ猫のマスコットが2体置かれている。

 展示室を見て隣に併設されているこけねこカフェに来た。

「もったいなくて食べれないよ~。かわいすぎる...」

 涙をにじませながら興奮しているももに目を細める。ふっ。かわいい。

 今日は、本当に良かった。ももとここに来れて。まったく会えなかった数日前を思い出し、胸がキリリと痛んだ。ホント、地獄だった。もうあんな思いをしたくない。ももと離れるなんて無理だ。

「よしっ。食べるぞ~!やっぱりオムライスからかな…?顔壊さないように…端っこから…」

 あはは。かわいい。わざわざ全部口に出して説明してる。うれしいなぁ。ももが楽しんでくれてるみたいだ。

「れ、蓮くん…?何?食べないの…?」
「ん?」

 どうやらずっとももを見ていたようだ。

「なんか、幸せだなって思って。」
「っつ…!」

 俺の言葉にももが一気に顔を赤くして横を向いた。あ。恥ずかしがった。

 あはは。愛しいな。ホント、幸せすぎる。

「蓮くん。やめて…そんなこと言うの。あと、そんな風に見ないで…」

 ももが真っ赤な顔をして拗ねたように少しにらんだ。

「ん?そんなこと?どんな風に俺が見てるって?」
「……無自覚…?」
「え?」
「もういいよ…蓮くんも早く食べて。」

 何かよくわからないももに笑顔で返す。そんな俺にももは苦笑い。

 俺の目の前にはももと同じオムライスワンプレートが。ハンバーグの耳の部分をスプーンでとった。

「見て。耳とっちゃった。あはは。ぅん。うまい。」
「ね。かわいいし、おいしいね。」

 こけねこカフェは有名カフェとコラボをしていて見た目も味も力を入れている。こけ猫ファンの間ではここのカフェご飯やデザートをSNSに載せるのが流行っているのだ。