「…もも…!!」

 小さくつぶやき思わず立ち上がった。その衝撃でももの傘が地面に落ちた。

「…レンくん。遅くなってごめん。」
「……」
「…もう、何やってるの?びしょびしょだよ。」

 ももが心配そうに俺を見た。

 もも、もも、ももだ…

 胸がぎゅっと締め付けられ体の奥から感情がぐっと外に押し出されるような感覚がした。

「ももっ、好きだ。」

 ももを抱き締めて思わず言っていた。

「え...」

「好きだ。大好き。」
「……」

 ももは黙ったまま。

 はっ!俺は何をしてるんだ。

「ご、ごめん!」

 ももを引き離した。雨で服が濡れてるっていうのに抱き締めてしまった。急いで地面に落ちている傘を拾ってさした。

「もも、来てくれてありがとう。ホントに、ありがとう...」
 
 下を向いたままだから小柄なももの顔が見えなくて、横から覗き込んだ。

「…真っ赤」
「えっ!何!み、みないでっ…」

 わかりやすく大きく動揺するももにふっと雰囲気が柔らかくなった。

「ふふっ。かわいい。もも、大好きだよ。」
「…っ!」

 今度は目を見開いて驚いた顔。一度言ってしまえばあとはもう簡単だった。もう、言いたくて仕方ない。

「ねぇ、もも。俺は本気でももが好きだよ。柚葉とは付き合っていない。中学の頃別れた切り、ずっと友達なんだ。信じて。」
「……」

 ももは相変わらず顔を真っ赤にして俺を見つめるだけ。片手でそっとももの顔に触れた。ぴくっとももが反応した。

「柚葉には悪いけど、中学の頃付き合ったけど、全然恋愛じゃなかった。俺は小学校の頃からずっとももだけが好きだったんだ。」
「……」
「ん?もも?」

 ずっとだまったままのももを覗き込む。自分でもびっくりするくらい甘く優しい声が出た。

「ちょ、っちょ、っちょと待って…」
「うん。」
「……」

 ももが小刻みに動いている。落ち着かない様子だ。

「柚葉ちゃんと付き合ってないのは本当なんだね…」
「ん?…そうだよ。誤解させてごめん。柚葉とはただの友達。」

 ももが小さい声で言った。

「…レンくが私のことを…?」
「好きだよ。」
「っ!」

 ますます顔を赤くした。

「…し、信じられないっ!」
「ホントだよ。俺はももが好きだ。それも、ものすごく。」
「えっ...」
「何回でも言うよ。信じてもらえないのはつらい。もも、好きだ。好き…」
「わ、わかったよっ。もう大丈夫。む、むり…」