ベンチに座って自分の靴を見つめる。

 ああ。やっぱりももは来ない。

 ももと智さんが仲良すぎるのがすごく嫌だ。ももに甘い言葉をかけるし、必要以上に触れる。そしてひどく整った顔でやさしくももを見つめる。智さんのすべてが気になって仕方ない。俺ってこんなに嫉妬深かったんだな。ももにだけ感じるこの独占欲。

『言っとくけど、俺は本気でももちゃんのことかわいいって思ってるからね。別に軽く考えてない。心配しなくていいよ。』

 さっきの智さんの言葉。どういう意味だろうか。もものことを好きだってことだろうか。イヤイヤ…それは困る。あんな百戦錬磨みたいな智さんに勝てる自信がない。ただでさえ会って話も聞いてもらえない状況なのに。

 はあ~

 ため息が漏れる。

 そういえば雨が降って来ていたな。手の感覚がなくなってきた。ぎゅっと両手を握る。気づいたら服が雨でびしょ濡れだった。

 きっと、ももは来てくれる。

 かすかな希望を捨てきれずただ待つしかできなかった。

 ーとその時。

 ジャリ。

 俺の前に人の気配がして、雨が止んだ。

 何気に上を見上げると-

 俺に傘をさすももがいた…