「ももちゃん、ももちゃん」

 無言のまま進むももちゃんに声をかけるけど、相変わらず反応なし。ずっと肩を抱いているのにツッコミもない。まあ、俺はうれしいけど。

 それでも頭の中はレンクンでいっぱいなのは悔しくて、ほっぺに軽くキスをしてみた。

「えっ?」

 やっとこっち見た。

「そんなに俺のこと無視すると今度は口にするよ~?」
「ごっ、ごめん!じゃなくて、やめてよっ!」

 真っ赤な顔で俺を見た。よかった、やっといつものももちゃんだ。かわいい。ももちゃんのこのテレ顔たまんない。気持ちに気づいてからますますももちゃんが可愛く思える。

 ぎゅっと抱き締めて、ほっぺにまた何回かキスを落とした。

「ちょ、ちょっと智くん、やめて。わかったから!」

 ももちゃんが押してくるけど、彼女の力なんかじゃ俺を引き離すことはできない。

「ホント、こういうのやめた方がいいって。」
「なんで?」
「なんでって…好きな人にするもんでしょ。」
「じゃあ、いいじゃん。俺ももちゃん大好きだもん。」

 やっぱり俺はいつもの通りに軽くしか言えない。

「はいはい。そうですか~」

 案定のももちゃんの塩対応。ふふっ。

「本気だよ?」
「は~い」

 上目づかいでアピールしてもももちゃんには届かない。本当だね。ももちゃんが言ってたっけ。本気で好きになった人に信じてもらえないって。その通りです。どうやって伝えよう。何せ本気になったのが初めてだからどうしたらいいかわからない。

「……」

ももちゃんはすっと表情が暗くなった。

「何かあったの?」

 顔をももちゃんの頭にのせ、背中を優しくさすりながら、静かに聞いた。

「……」

 ももちゃんは暴れるのをやめ、静かになった。

「…何でもない。ちょっと、レンくんと喧嘩しただけ...」
「そっか」

 ちょっと喧嘩って雰囲気じゃなかったけど。すんごく気になる。でも、俺には話してくれないようだ。

 腕の中からももちゃんを放し、手を繋いだ。

「俺、お腹空いたからちょっとコンビニつきあって。」