12月に入り少しずつ冬の香がするようになった。夜6時にもなれば外は真っ暗で、もう真夜中の装いだ。

 のれんをしまうため外に出るとももちゃんの姿が。

「…やめて」

 ももちゃんの小さい声が聞こえた。男と一緒にいる。はっとしてももちゃんの元に走った。

「おい、やめろよ」

 男の腕を上へねじり上げた。

「智さん?」
「智くん?」

 二人の声がシンクロした。

「え?レンクン?」

 驚いて二人を見た瞬間、ももちゃんがきゅっと俺の袖をつかんできた。

「智くん、帰ろ」

 ももちゃんが不安そうに瞳を揺らしながら俺見つめ、服を引っ張ってその場を離れようとした。

「ちょっと…待って、もも!お願いだから話聞いて!」

 レンクンが叫んでいるけどももちゃんはお構いなしにずんずん道を進む。俺はももちゃんの肩を抱いてレンクンに笑顔を向けた。

「レンクン、お疲れさま」

 これは二人何かあったな。最近ももちゃんが元気がなかったのは彼のせいか。帰るっていっても俺の家はさっきの店なんだけど。苦笑しながらももちゃんの表情を伺う。固くこわばった顔にはくっきり眉間にしわ。そんなおかしな状況にもまったく気づいていなさそう。