「ほのちゃん!」

 小走りで追いかけ声をかけた。

 彼女の目が一瞬見開き鋭くなった。

「何ですか。最低ヤローさん?」
「……っ」

 以前会った明るく元気なほのちゃんとは明らかに違う。声を失い黙ってしまった。

「何か用ですか?」

 冷たい目線が突き刺さる。

「…お、怒ってるよね?」
「当たり前ですよ。あなたがそんな最低な人とは思わなかったです。人類みな兄弟みたいなオーラを出しておきながら腹の中では何考えてるんですかね。もう私たちに話しかけてこないでください。ももを傷つけたこと、絶対許さない!」

 言いたいことを言いきったからもう必要ないというように彼女はまた廊下を歩きだした。終始敬語なのが彼女の怒りを表している。

「ま、まって」
 
 声をかけたけどもう止まってくれなかった。もう一度追いかけて彼女の肩を掴んだ。

「…何?」
「誤解なんだ。俺はももが好きだ。柚葉とは付き合ってない。」
「は?」
「柚葉とは確かに昔付き合っていたけど、それは中学のころ。それ以来ずっと友達なんだ。」
「……」

 相変わらず冷たい目をむけてくるほのちゃんだけれど、話を聞いてくれる気になったようだ。