『智、元気だった?』

『何で連絡先教えてくれないの?』

『会いたかったぁ』

『ママと一緒に住もうよ』

 甘えたように話すあの女の顔。ベタベタと触ってくるあの女の体温。

 忘れたいのに何度も何度も脳裏に浮かぶ。ママだなんてあの人の中では俺は子供のままなんだろうか。

『ますますパパに似てきたわねぇ』

 愛しそうに見つめる瞳を思い出すだけで吐き気がする。

 寝返りをうってより深く布団にもぐった。





「智くん…?元気~?」

 トントンと部屋のドアを叩く音が聞こえベットから重い体を起こした。急に真っ暗だった部屋が明るくなる。眩しい目を瞬かせてドアをの方を見ると、ももちゃんがいつものように穏やかな笑みを浮かべていた。

「あ~眩しいな。何だよ、ももちゃん。入ってきていいとも言ってないのにさ。」
「そうだっけ?いいって聞こえたようなきがするけど。あはは。まあ、いっか。」
「え~?まあ、いっか。あはは。」

 久しぶりに声を出したせいで、掠れてしまった。

 勝手に部屋に入ってきた相手に普通だったら腹が立つだろうに思わず笑ってしまった。ももちゃんのマイペースさに瞬時に部屋のどんよりとした空気が変わった気がした。