「...っ!桃花?どうしたの!?」

 私の顔を見たとたん、お母さんが駆け寄ってきた。私は一体どんな顔をしているんだろうか。きっとヒドイ顔をしているんだろう。

「ちょっと体調悪くて…そのまま寝るね...」

 心配するお母さんの顔が見れずそのまま階段を上って行った。

「…ふぐっ…」

 部屋の扉をしめてそのまま座りこんだ。がまんしていた涙があふれた。何泣いているの。私なんかが何で泣いているのっ…!

「…なん…でっ…あんなことを…さいていっ…」
 
 真っ暗な部屋に泣くのを我慢する声が消えていく。泣きたくなんかないのに。自分が悪いのに泣くだなんて。悲しそうにゆがんだ柚葉ちゃんの顔が頭から離れない。

もう認めるしかないよ。

 レンくんが好き。

 ずっと気づかないふりしてた。レンくんは柚葉ちゃんの彼氏。友達の彼氏。だから好きになるなんて絶対ダメ。それに絶対に叶わない相手。昔からラブラブでお似合いなのを知っている。私なんかが入り込むスキなんて一ミリもない。入ろうとも思ったこともない。ただ昔のようにレンくんと話せるようになっただけでもすごく幸せなことなのに。

 レンくんに見つめられたらそんな考えふっとんでたよ。レンくんのことで頭がいっぱいだった。いつのまにかこんなに好きになっちゃってたんだ。

 レンくんに優しく触れられて、胸がぎゅーっとなって動けなくなった。あの時柚葉ちゃんがこなかったら…

 あ~!もう、私何しようとしてたの...

 ベットに思い切り飛び込んだ。頭を両手でポカポカ叩いた。後悔しても遅いよ。みんなに私の気持ちバレちゃったよね。

 レンくんもレンくんだよ!柚葉ちゃんって言う最高の彼女がいるくせになんであんな風に私を見つめるの!優しく触れるの!何なのもう!ホント、レンくんは自分の魅力をわかってない!

 は。私がチョロそうに見えたかな。簡単にそういうことできそうな感じに。ヒドイ!レンくんがそういう人だった?彼女がいるのに手をだすような?

 って、私なんかに手を出そうとしないよね。かわいくもないし色気もないのに。もしかして、私がしてほしそうな顔してたのかな。それでかわいそうな私に同情したレンくんの優しさ?イヤイヤ!だからって手を出しちゃだめでしょ!

はっ!レンくんから触れてきて近づいてきた気がしたけど、私の勘違い?熱っぽい目をしてたのも全部私の願望が勝手に見せてきたのかな?

「…っ…うぅ…」

 涙がボロボロこぼれる。苦しいよ。もう何がなんだかわからない。私が悪いのにレンくんのせいにもしちゃうよ。あたまがぐちゃぐちゃ。

「柚葉ちゃん…ごめんね…レンくん。レンくん。レンくん。」

 愛しい名前を呼ぶ。それだけで胸がいっぱいになる。

 今日だけはレンくんを想うことを許してあげよう。私の初恋だもん。今日だけ。

 …もう会えない。レンくんに会ったら自分の気持ちを隠せる自信がないよ。