「うわぁ!なつかしい!」

 ももが目をキラキラさせて叫んだ。

「俺も久しぶりに来た。遊具がこんなに小さかったっけな。」
「これはなかったね。」

 最寄駅から家に向かう帰り道になつかしい公園に寄った。普段横を通るだけで中まで入ることはなかった。小さな遊具が4つあるだけの小さな公園。それでも俺たちは暗くなるまでここで遊んだっけ。遊具で遊んだり、木登りしたり、地面に絵を描いたり、ボールや缶を蹴ったり。二人の一番楽しかった頃。

「レンくん、来て来て!この滑り台!」

 ももが大きく手を振って俺を呼ぶ。まるで小学生の頃に戻ったような錯覚を覚える。

「レンくんさ、この滑り台の上から飛び降りるとか言って着地失敗して足捻挫したよね。ふふっ。」
「はは。そんなこともあったな。ももだってあのジャングルジムからすべって顎ぶって大泣きしたよな。」
「え~?そんなことあったかな。」
「あった。あった。ほら、あの木!あれ登ってスカート破いたり。」
「も~!そんな変な事ばっかり覚えてるんだから。」

 俺に笑顔を向けてくれるももを見つめた。俺はこの8年間何してたんだろうな。少しの勇気さえあればきっとももは俺の手をまた握り返してくれただろうに。この愛しい時間を自分で手放していた。

「ん?」

 その時、ももが不自然に目を逸らした。

「…っ!レ、レンくん!秘密基地!」
「えっ?ああ。なつかしいな。」

 大きなドカンが埋まった小さい山。そのドカンが俺たちの秘密基地だったっけ。何てことないドカンだけど、秘密基地に憧れる年頃だった。

 秘密基地に向かって走るももを追いかけた。

「うわぁ。狭い。入れるかな?」

 暗い狭いドカンの中にももが入って行く。俺も続いて足を踏み入れた。