そう思っていたのもそんなに長くは続かなかった。やっぱり蓮也から私に触れてくることはほとんどない。キスも私から求めないとしてくれなかった。

 蓮也は私に触れたいと思わないんだろうか。私はこんなに蓮也に触れたいのに。こんなに好きなのに。

 結局、付き合って2年後くらいに私から別れを告げた。

 もう限界だった。付き合ってるのにずっと友達のまま。私ばかり好きですごくつらかった。この状態なら友達に戻った方が私が気持ち的に楽になれると思った。

 蓮也は頭がいいけど、恋愛に関しては幼くて鈍感だった。男とか女とかの区別がない。だから私に対しても男友達と変わらない。

『私達別れよ。』

 本当はこんなこと言いたくなかった。

『蓮也のことは大好きだけど。やっぱり友達って感じかな。』

 別れたとしてもそばにいたくて、思ってもないことを言った。

『これからも友達として仲良くしてね。蓮也の一番の女友達は私なんだから。』

 涙がこぼれそうなのをこらえて一番の笑顔で言った。予想通り蓮也からしぶられるわけでもなく私たちは綺麗に別れて友達に戻った。

 今は友達に戻って、これからもっと蓮也が恋愛的に大人になったらまた告白しようと思った。


♢♢♢

 自分の部屋に戻って窓から外を眺める。やっぱりすごくきれいな月。

「はあ~あ」

 大きな溜息が出る。

 中学3年の夏が思い出された。あれ以来友達としてずっと蓮也のそばにいた。一番近い女の子として。蓮也が恋愛的に成長したら、また告白しようと思っていたけど、未だにその時は来ていない。

 相変わらず蓮也は私を仲良しの女友達としか見ていないし、いくら私が触れても何も感じていない。気持ちがないとしても男として多少反応することもあるだろうに。全くない。

 この先私はどうしたらいいんだろうか。蓮也のことはどうしても諦めることはできない。

 綺麗すぎる月を見ても胸のつらさは消えない。月を睨む目から緩やかに涙が流れた。