「あら、まぁ。ありがとう!…って、もしかしてレンくん?」
「はい、おばさん、お久しぶりです。」

 ももの家ではおばさんが大歓迎で出迎えてくれた。

「うわぁ。久しぶりねぇ!かっこよくなって!」
「あはは。おばさんも変わらずお元気ですね。」
「うふふ。レンくんに会ってますます元気になっちゃうわぁ。」

 ももによく似た顔でおっとりと言う。ももは間違いなくおばさん似だ。

「重いのにごめんね。申し訳ないけど、ももの部屋までお願いできる?」
「もちろんです。」
「部屋は...知ってるわよね。」
「ええ、2階の奥で変わってないですか?」
「うん。お願いね。」

 笑顔で頷き、階段を上がった。

 ももの部屋のドアを開けるとふわっとももの香りがした。やさしいももの香りに少し鼓動が早くなった。

 ふぅ。ベッドに降ろし、小さく息をついた。さすがに階段はちょっとキツかった。

 ぐっすり眠るももを見て笑みが漏れた。

 薄暗い部屋をぐるりと見渡した。廊下の明かりだけが頼りだ。目が慣れてきて少し物が見える。久しぶりのももの部屋。記憶と違い女の子っぽいものが増えた。こけねこのぬいぐるみも見える。

「んっ」

 急にももが苦しそうに声を出した。どきっとしてももを見る。喉元が苦しそうだ。ドキドキしてもものシャツのボタンに手をかけた。

「いやいや、コレは苦しそうだから...」

 一人で言い訳をしながらボタンを2つはずした。

 ふぅ。何か緊張した。

「んんっ」

 ももが寝返りをしてこっちを向いた。

 うわヤバ起きたか。じっとももを見るとまた寝息が聞こえた。よかった。

「え?」

 心臓が大きく跳ねた。ち、ちかい。ボタンを外す時、薄暗いから思ったより近づいていたようだ。目の前にももの唇が。磁石に引き寄せられるように自然と近づいて行く。もう少しで触れそうな時、

「ぅん...」

 ももが反対側に寝返りを打った。

「…うぁ…俺…何やってんだ」

 口を押えて思い切りももから離れた。そしてドアをゆっくり閉めて、階段を降りた。

「レンくん、ありがとう。わざわざ、ごめんね。ちょっお茶でも飲んで行って。」
「あっ、おばさん。すみません。俺、ちょっと。今日は帰ります。すみません。」
「え?そう?また遊びに来てね。」
「は、はい。おじゃましました!」

 逃げるようにももの家を出た。