ある金曜日の夕方。とも庵にて。今日も俺はももちゃんとお仕事。小さな店舗だから本当はバイトは雇わなくてもいい。じいちゃんが開店前と開店後に作ったものを数種類だけ並べてある。地域の人の為にのんびり運営している。まあ、俺はお世話になってるからしょうがなく?そんな必要もないバイトを受け入れたのもももちゃんだったから。昔からよく知ってたし、何より和菓子への情熱がすごかったらしい。それに加えてあのももちゃんの穏やかな雰囲気にじいちゃんがほだされちゃったんだよね。

 高校生になりたてのももちゃんが肩を怒らせてこの店に来た時のことを思い出した。俺は奥にある部屋で携帯をいじっていたけど、店に似つかわしくない大声が聞こえて店に見に行ったっけ。緊張しすぎて声の調節間違ってた。かわいかったももちゃんにふふっと笑みがこぼれた。じいちゃんはその場で採用を決めて、俺に教えろって教育係をさせたんだ。たまにしか店に出てなかったのに、いつのまにかももちゃんと一緒にこんなに店に立つようになるとは。

「やっほー、もも遊びにきたよ。」
「あ、レンくんと柚葉ちゃん。いらっしゃいませ。」

 知り合いでも来たのかとふと客に視線を移した。おぉ。迫力。すっげぇ美男美女。ももちゃんの知り合いにしては珍しくタイプが違う。

「何にしますか?」
「店員さん、何がお勧め?」
「今の時期、栗やさつまいも系がお勧めだよ。あと、和菓子があんまりっていう人にはこの和洋折衷の抹茶羊羹ケーキもお勧めだよ。」
「わあ、おいしそう。蓮也、2つ頼んで半分こしようよ。私いろいろ食べたい。」
「そうしようか。じゃあ、コレとコレ?」
「お茶はどうしますか。」

 ももちゃんが一礼して戻ってくる。俺と目が合い指でVマーク。ふふ。抹茶羊羹ケーキが注文されたみたいだ。

「しょうじいちゃん、注文はいりまーす。栗きんとんと抹茶羊羹ケーキです。お茶は、煎茶とほうじ茶です。」
「ほーい」

 ん?視線を感じた。その視線の先を確かめるとももちゃんの友達がずっと彼女の後ろ姿を愛しそうに見ていた。女の方はメニューを見ていたけれど、男の方がこっちをずっと見ている。その視線になぜが違和感を感じた。まあ、いっか。俺は厨房の中に入った。

 じいちゃんがお茶を作り始める。おいしく淹れるのが難しいお茶は基本じいちゃんが作る。饅頭たちをお皿に盛りつけて、できたお茶を載せて持って行くのが俺たちの仕事。早速抹茶羊羹ケーキの盛り付けに取り掛かる。ももちゃんは栗きんとんの準備。俺は冷蔵庫から抹茶羊羹ケーキを持ってきて皿に載せた。さあ、ここからが腕の見せ所。生クリームの絞り袋を持って気合を入れる。うまいこと綺麗においしそうに載せ、ケーキの上にミルクチョコレートと抹茶チョコレートの板チョコを削いでぱらぱらと落とす。