3号館に向かう銀杏並木をほのちゃんと歩く。まだ紅葉が始まる様子もなく緑鮮やかな葉が青空に煌めく。ギラギラ熱い太陽に目を細めた。

 レンくんがよくわからない。

 あんなにそっけなく私を避けていた彼が何もなかったかのように親しげに話しかけてきた。その流れでお昼を一緒にして帰りも一緒に帰った。今日はカフェへのお誘い。どういうことだろうか。私に何か怒っていたんじゃないのかな。忘れちゃったのかな。こっちは一度も忘れられなくてずっとつらかったのに。急すぎる展開について行けないよ。それなのに私のことを気軽にかわいいって言うし、すごく甘く私を見つめてくる。レンくんは変わったよ。彼女がいるくせに他の子に愛想を振りまくなんて。それなのに彼の笑顔を思い出すだけで少し鼓動が早くなった。

 今なら小学校の頃のことを尋ねてもいいだろうか。でも、やっぱり怖い。せっかくこうしてまた昔のように友達に戻れそうな気がするのに。私は昔、レンくんが大好きだったから。

「もも!」

 カフェのテラス席からレンくんが手を振るのが見えた。昔と変わらないキラキラした笑顔。まだ憂鬱な気持ちは完全には晴れないけどレンくんの笑顔を見ると自然と私も笑顔になってしまうのだ。