見てみろと友人の肩を叩く人もいれば、携帯を屋上に向ける人もいる。耳をすませば、面白がる人の耳障りな笑い声さえ聞こえる。

屋上の彼女は、おでこに手を添え辺りを見回した。
横断歩道を挟んだ向こう側に薔薇の花束を抱えた人がいるのを見つけると嬉しそうに微笑んだ。

『ちゃんと見ててね。

さよなら、私。さよなら、のばら。』

大きく腕を広げて、華奢な体は一瞬強風に捕まれて宙に浮いたかのように見えた。
次の瞬間 -パンッ-

水風船を叩き割ったかのような、破裂音が辺りに響いて、少し遅れて悲鳴があがった。

それは『人気YouTuber のばら』が炎上した翌日の出来事だった。