受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

 レーヴはもう二十五歳である。今更どこを大きくするのだとアーニャは訝しげにジョシュアを睨んだが、好好爺然した彼に邪な気持ちは一切見受けられない。尊いものを拝むような、そんな目で彼女を見つめていた。

 きっといつまでたってもレーヴはかわいい孫みたいな存在なのだろう。
 だが、あまりの溺愛ぶりに「いつまでも子どものままじゃないのよ」と反論したくもなる。
 そしてアーニャは思った。つい先日見てしまった、あのことを話してしまおうか、と。

「ところで、レーヴ。休んでいた時、自宅で男性に迫られていたみたいだけれど、その後どうなっているの?」

「は? え?……んぐぅっ!」

 クロワッサンを喉に詰まらせ、胸をたたくレーヴに、アーニャは水を差し出した。
 涙目でそれを受け取ったレーヴは、もっといじめたくなるほどかわいらしい。
 苦しさに上気した頰は、あの時見た、恥じらう顔とよく似ていた。